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2017.5.13 「セラピストのためのグリーフセミナー」覚書です。
講師は 橋爪謙一郎 先生(株式会社ジーエスアイ/代表取締役)。
グリーフ(悲嘆)とは、遺族が大切な人を失った時に生じるさまざまな感情や思い・考えに蓋をした状態。
「いつまでも悲しんでいたら、故人は成仏できないよ」などと言われてしまうこともあって、日本人はとかく気持ちを溜めこみがちです。
一時的に心を麻痺させることで日常生活を維持しようとする、正常な心の働きなのですが、蓋をした状態のままではいつまでも気持ちは癒されないのだとか。
遺族が悲しみや心の痛みと向き合うことができるように、支援者としてどのような姿勢・意識で出会うのが良いのか。
セラピストとしてのあり方を考える機会となりました。
大切な存在を失うということは、大切な存在とともに育まれてきたもの、つまり、自分らしさや肩書、思い出、予定・・・そういうものも一緒に失うということです。
言うなれば、「大切な存在とともに多くのものがもぎ取られた」ように感じてしまう。
「体が引き裂かれたような」とか「抜け殻になった感じ」とか、そういう言葉で表されることもありますね。
これは死を予期した時から始まっていて、長く看病や介護を続けている人にも同様に生じているそうです。
一方で、グリーフのさなかにいる時は、本人は気づいていないことが多くあります。
心を麻痺させているのだから当然と言えば当然ですが、本人がグリーフに気づいて治ることよりも、グリーフと気づくまでの方が大変なのだとか。
“グリーフだとわかる”ということは、認めがたい現実を受け入れるということ。
押し込めていた感情の蓋を開けること。
自分の悲しみや心の痛みと向き合う必要があるので、中から何が出てくるのか・・・
直面するのはやはり怖いですよね。
あるいは、感情を出したり人に頼ったりすることはいけないことだと思い込んでいる人もいます。
感情を押し込める時間が長引くほど、自分の一部がもぎ取られたような危機的状況は続くので、体にある防衛反応は作動しっぱなしになります。
こうしてグリーフは、体や認知、人間関係、生活、存在についての価値など、さまざまな局面に影響を及ぼしていくのです。
一番の学びは、あれもこれもグリーフかもしれない、ということ。
更年期障害と診断される時期は、親の介護や死と重なる人もいます。
認知症を疑われる時期には、配偶者を亡くしている人もいます。
グリーフによるさまざまな変化は、うつ病や自律神経失調症、認知症などと区別がつかないものもあって、グリーフだと気がつかれないまま別の病気として治療を受けている人も多いのだそう。
これらの変化、状態は決して異常なことではない、自らの身を守っている正常な反応なのだと周囲が理解することが大切です。
周囲が安全だとわかって初めて、自然な感情表現が可能になるからです。
ここから支援は始まります。
グリーフの状態から回復するには、抑え込んだ感情や思い・考えをありのままに表現し、誰かと共有していくことが必要です。
気持ちを表現しながら、大切な存在が亡くなったことを現実のこととして認められるようになる。
そうすると、さまざまなことを思い出し始めます。
亡くなった存在との思い出を語り大切にすることで、悲しみとの折り合いをつけ、新しい「自分らしさ」を獲得していくのです。
そのためには、どんな感情表現もできるようになること。
自分の中にある感情をありのままに表出し、自分でそれを把握すること。
現実と向き合う覚悟も必要です。
そこには幸せな思い出ばかりではない、憎しみや怒り、恨みのようなものもあるかもしれません。
何度も何度も同じ思いが出てくるかもしれません。
傍から見ると、また同じこと言ってるという状態です。
これもあたり前の反応で、何度も反芻することで理解できるようになり、脳に刻まれていくのだそう。
それも自分なのだと認められるようになると、悲しみやつらさと折り合いが付けられるようになるのです。
だから、傍でサポートする人は面倒くさがらずにこのプロセスに付き合ってほしいと思います。
どんな話でも受け止めてくれる細かい網のような支えがあるからこそ、どんな感情表現も可能になるのです。
最近、原因に向き合わせない心理支援のみをやっている人が増えています。
過去を振り返ることは無意味だと断じている人もいて、なんだかもやもやとしていました。
明るい理想の未来を設定していくことで気分や自己イメージが変わり、動き出せるようになるのも事実です。
私自身も、催眠療法やセミナーを通して未来志向へシフトするよう働きかけています。
ただし、それは一時的に高揚しているだけ、そう思い込んでいるだけ、のことも。
基礎が不十分なまま建物を造っても、何か大きなトラブルに見舞われるとまたグラグラしてしまいますよね。
また、つらい記憶に向き合わなくても、体に刻まれたトラウマの記憶を解放していくTRE(緊張・トラウマ解放エクササイズ)のような技法もあります。
これ、画期的なことだと思います。
ストレスフルの状態ではなかなか状況は変わりづらいから、まずは余力を作っていくことが大切。
感情と同じように、体に溜め込まれている記憶(感覚・印象)を表出し解放することで余力が生まれ、自分を支える力が沸いてくるのです。
でも、どこかで「自分を把握する」というプロセスを経ないと、自分の力で生きていく本当の力にはなりにくいとのこと。
やっぱりそうだよねという確信も得て、もやもやもスッキリと晴れて、自分の役割、立ち位置がより明確になりました。
グリーフサポートについては、これからも学びを深めていこうと思います。